迷度ますます上昇中

 


「だから言っただろ・・・やめとけばって」

「それでも観たかったの」

碧の言葉にいつもなら強気で答えてくる皐月も、今日ばかりは覇気がない。
怖がりのくせにそういうものに手を出したがる皐月は、ホラー映画を観たがって碧をそれに付き合わせていた。
止める碧の言うことはもちろん聞かずに。もっとも、碧が止めたのは皐月のためであって、碧自身ホラーは全然平気だ。

「今日絶対寝れない。自信ある。あああああ〜」

「大丈夫か?」

「だいじょーぶじゃない・・・碧、何かおいしいもんおごって・・・そしたら治るぅー」

「・・・元気じゃん」

皐月と碧は、一緒に動いたりすることが多い。
皐月からしても、碧をよく知っているから楽なのだろうし、好きなものが共通しているのもあるのだろう。
だから今でも皐月はよく碧のもとを訪れるし、この年頃の幼馴染みというものよりも一緒にいることは多いかも知れない。
だからこそ、碧は困惑したりどきりとしたりする。

碧が目指していたミスドに、ふたりは足を踏み入れた。

「ほら、何頼む?」

「わーい。じゃあれとー、これとー、ウーロン茶お願いします♪」

「・・・やっぱり元気じゃん」

自分達は傍からどう見えているんだろうか、と碧は思う。
皐月には、幼馴染み以上の感情はないはずだ。けれど皐月のことで一喜一憂するようになってしまった自分、皐月を目で追ってしまう自分は、明らかにそれ以上を望んでいて・・・。

「思うんだけどさ・・・この春休みおれのとこ入り浸ってるけど、彼氏はどうしたの」

「なに急に。しかもいつの話してんの。半年前に別れました」

「え、マジ?」

「マジです。だから碧をあちこち引っ張りまわしてるんじゃない」

「それはいつも。皐月言わなかっただろ、初めて聞いたよ」

「そうだっけ?まぁでもそうなる予定の人はいるから、何にも問題ないわ」

彼氏と別れたと聞いて気分が浮上したと思えば、にーっこりと笑ってそう言う皐月にまたしても灰色の気分が這い出す。

碧はまたため息の回数が増えそうだと思った。