say my name

 


「美咲先輩・・・そろそろ、高見くんじゃなくて遼って呼んでよ」

抱きしめあってくすくす笑いあっていると、高見が少し憮然とした顔になって美咲を見上げてきた。その言葉と表情がかわいくて愛しくて、美咲はふと笑ってしまう。

「じゃあ先輩って呼ぶの、いい加減やめてよ」

「・・・これはもう、癖っていうかなんていうか・・・」

「じゃあわたしも呼んであげない」

久々に休日らしい休日を迎えて、心からふたりきりの時間を楽しんでいる日曜日の夕方。
今いる美咲の部屋で夕ご飯を済ますか、食べに出ようか決めかねて、ごろごろしていたらこんな会話になって。

「じゃあ俺もちゃんと、呼ぶように気をつけますから」

「それにいつまでも敬語だし」

「う。・・・それも直すから」

今回はなんだか自分が優位で嬉しい美咲は、ふふっと笑ってきゅうっと抱きしめる腕に力をこめる。広い背中をちゃんと包めているだろうか、なんて思いながら。

「・・・美咲」

かけられる声に、美咲の胸がふるえる。
なんて、甘い気持ちを呼ぶ響きだろう。以前から呼ばれてはいたけれど、先輩抜きはこれが初めてで。好きな人から名前を呼ばれるのはとても幸せで・・・あったかくて、美咲は高見の優しい胸に頬をよせた。

同じ気持ちを、自分はあげられるんだろうか。もしそうなら、一刻も早く教えてあげたいと思う。こんなに幸せな気持ちになるんだってこと。

「遼・・・わたし今すごく幸せ」

一瞬の後、美咲に回されていた腕の力が少し強くなって。高見も同じように感じてくれたんだろうか。
そうしてしばらく、心地よい沈黙と温度を分かち合う。

「外出るの面倒くさいし、ここでご飯にしよっか」

「美咲先輩が作ってく・・・あ」

「あ」

「・・・・・・みさき?」

「車、出してくれるでしょ?ほら立って、食べに行くわよ」

お互いが自然に名前で呼び合えるようになるのは、きっと当分先の話だなと思いながら、美咲は笑ってしまったのを隠してつんと言ってやった。