怖い。怖くない。・・・どっち
大きな音の中、彼の周りだけ無音のようだった。
それに影響されたように、わたしも音が遠く聞こえていて。まるでガラス越しに音楽を聞いているような。
その中で、わたしの中もなぜか落ち着いていて、なんだか何かがおかしかった。
別に夕吾を許したんだとか、そういうんじゃない。
ただ、彼だとしても男の子から離してくれたのはありがたかった。完全に安心する余裕はなかったけど。
でも、だからこそ。
だからこそ、あれからわたしは、どう振舞っていいのか余計わからなくなってしまった。
はぁぁぁぁ。どうしたらいいんだろう。わたし、どうしたいんだろう。全く、答えが見えない。
わたしは男が嫌いだと思ってた。それは違って実は怖がってたって、夕吾に痛い目見させられて知って。
夕吾も怖くなったはずだった。嫌いになったはずだ。なのになぜ昨日は。
握られた手も振りほどけずに、こともあろうかだんだん落ち着いていったんだろう。
夕吾も、「怖い男の子」の中のひとりのはずなのに。
恐怖症って言ったら強すぎるかも知れないけど、これを治したい。でもどうやったらいいのかわかんない。
夕吾が怖かったはずなのに、怒ってたはずなのに、嫌ってたはずなのに・・・昨日を思い出すとわからない。
頭の中がごちゃごちゃしてる・・・。わたしは、どうしたらいいの?
そう思ってはいても、通常通りの日々は過ぎていく・・・つまり、男の子を怖がっていてもそうじゃないように振る舞う日々。夕吾を避ける日々。
わたしがこんななもんだから、ケヴィンがちょっと気にしてる。でも、これは仕方がないよ・・・。
スチューやフリーダ、アントネーラもきっと何か気づいてるかも知れない。でも、どうしようもないんだもん・・・!
でも実は、ひとつだけ聞いたことがある。
それはハロウィーンから2日が経った昨日、うなって悩んでもうどうしていいかわかんなくなって・・・男の子が怖いんだけどどうしたら治るかなって相談メールを、日本にいる大親友のまゆに送ったら返って来た言葉。
「一番手っ取り早いのは、彼氏つくってやっちゃうことなんだけどねー」
わたしどうすればいいのって途方にくれてしまった・・・。きっと、そう思うのはわたしだけじゃないよね?ね?
でもまゆからすれば、冗談で言ってるわけじゃないみたいで・・・でもそんな方法無理に決まってる。
男の子が怖いのに恋愛なんてできない。彼氏なんてつくれるわけないじゃない。
その上そんなことするなんて・・・絶対無理。
「はぁ・・・」
「ほたるちゃん、どーしたの〜?」
「え?」
授業まで少し時間があったから blend でコーヒーでも飲んで時間つぶそうかなって思ってたら、万里子さんに声をかけられた・・・てか思いっきりため息ついてるとこ見られちゃったや・・・。
わたしはいつも通りに笑って、何でもないよって返す。出さなきゃいけない課題のことを話題に出して、その話にうまく切り替えて。万里子さんも取ってるクラスの課題だったから、彼女もうまく乗ってくれて。
やり過ごせたかなって思った。ごめんね万里子さん。でもわたし、今は誰にも触れられたくなくて・・・。
でも別れ際に、万里子さんはこう言ったんだ。
「何にも、どんなに小さくても中心ってあるんだよ。ちっちゃいそれ、まずは勇気出して触ってみるってどう?」
にっこり笑顔でそう言って、万里子さんは颯爽とわたしと逆方向へ歩いていった。か、かっこいいよぉ。
万里子さん、わざと笑って明るく言ったのかも。わたしが勇気出せるように、ぽんって背中押すように。
悩みのことは言っていないけど、見事核心を突いてる。何事も根本を何とかしないと解決しないようにね。
それでわたしの中で、ちょっとだけ勇気が生まれた。ほんとにわずかな勇気だけど。
万里子さんがあの言葉を言ってくれたお陰だよね。
大きくふくらんだ問題だとしても、理屈も思い込みも全部取り払った核は、きっとちっちゃなもの。
総動員できるすべての勇気でもって、それに触れてみよう。
決めた・・・!
やっぱりかなり、怖いけど・・・何が起こるかもわからないけど。でも何かしてみなくちゃ何も変わらないから。
夕吾と、話してみよう。
人が決意したと同時に、誰かさん来ないんですけど・・・っ。
わたしがせっかく、せっかくなけなしの勇気つぎこんで、夕ご飯の時間にキッチン行ってるっていうのに・・・!
いっつもケヴィンと一緒につるんでるくせに・・・ムカつく!
わたしが出てきたことで、スチューもフリーダも他の子たちも喜んでくれたけどね。それってあったかい。
わたし、この温かさもしばらく避けてたようなものだ・・・みんなといっぱい話せる夜に、部屋にこもってたから。
頑張って、何事もなかったかのようにここにいれるくらい、すっきり解決してしまわないと!
・・・だから夕吾、さっさと現れなさいよ!わたしから何かするのはなんだかムカつくから嫌なんです・・・。
何かが解決するかも知れない。何も起こらないかも知れない。夕吾がやっぱり怖いかも知れない。
でも動くことで、ちょっぴりでもわたしが変われるかも知れない。
だから、話をしなくちゃ。
そうして1日2日過ぎていって・・・夕吾は、まるで避けるかのようにサフォークに来なくなってしまった。
top 07.ガイ・フォークスの夜