大学とは

用語

 

 

 

University of Norwich。
Norwich(ノーリッジ)ていう、ロンドンから東北東くらいの位置にある街の大学。そこにわたしは通っている。
イギリスの大学は通常3年。日本と違って、教養科目なんてなくてすぐに専門科目から始められるから、わたしはそこらへん好きだったりする。だって教養科目って、なんだかつまらなそうな気がするし。
そして年度の始まりも日本と違って9月から。
しかも9月の下旬も下旬で、始まって1週間ちょっとで10月ってどうなんだろうって思う。けどまぁいいとして。

わたしの学部は開発。この大学は開発学と環境学が有名らしくて、大学始まってみてびっくり。
わたしの学部は、日本人がほんと多い!今のところ話したことがある人だけで4人。もっといるし、もちろん他国からの留学生も多い。開発学ってでっかい学問だしね。

 

 

 

「あ、ほたるちゃん!」

「なおちゃん。どうしたの?」

「実はさー、さっきのNR寝坊して出れんくてさ・・・ハンドアウトコピーさしてくれん?」

「はぁぁぁぁ。どーりで見なかったわけだ。しょうがないなぁ、ほれ」


授業が終って、最近割と話すようになってきた美紀ちゃんとふたりで zest でご飯食べてたら、なおちゃんもとい直斗さんがやって来て、苦笑しながら言う。
とかいって、実はわたしも何度か寝坊してるから、偉そうなことは言えないんだけどね。
本日の朝イチの授業だったNRのハンドアウトをなおちゃんに渡しながら、手に触れないようにさり気にぱっと手を放す。・・・もうこれは癖だし、さり気ないはずだし、誰も変な顔をしたりしないからバレてないと思うけど。

わたしの向かいに座ってる美紀ちゃんも、わたしたちと同じでNRを取ってるんだけど、ふたりはまだそれほど話したことがないみたいで、当たり障りのない空気があたりを漂っている。
それを言えば、わたしだって美紀ちゃんと話しようになったのもほんの少し前なんだけど。


「なおちゃんご飯食べたの?」

「食べてないよ・・・今から Economics なんだよ」

「げ・・・経済取らないでほんと良かった」

「うるさいなぁ」


ご飯食べないならさっさと行け、と言わんばかりにあたしはしっしと手を振って、なおちゃんを授業へ向かわせた。それを見送って、にこにこしてた美紀ちゃんが、本日のメニューのカレーをつつきながらぽつりと言った。


「ほたるさ、なおちゃんさんと仲いいね」

「絶対美紀ちゃんも仲良くなると思うんだけどね、本性を表せば」

「これが本性だけど?」

「だから、それをなおちゃんの前でも出すってことー」

「失礼な。あたしはいつもこうです」


まだ新学期が始まって1、2週間。まだまだ仲良さとよそよそしさの中間を行ったり来たりする時期で、わたしたちの会話もどこか上滑りの調子だった。

だから、新しい環境は気疲れするんだ・・・。

 

 

 

寮に帰れば、そこはそこでまた別世界。
わたしの住む寮はSuffolk Terraceっていって、みんなサフォークって呼んでるところ。12人の生徒でひとつのフロアを共有。だからキッチン、お風呂、シャワー、トイレは共用。そこでシャワーとトイレがそれぞれの部屋についてる Nelson や Village がうらやましくなるんだけど、まぁどんなとこも住めば都。
わたしにとっては、寮はほんとに別世界。生徒もばらばらの学部からだし、学年だって違うのは当然だし、何より相性の合う人が集まったらそこは最高の空間になる。
今回の顔ぶれは、すっごい当たりだと思う。


『あ、ホター!なぁなぁなんか作ってよ〜オレマジ腹減った!!』

『だからー、いつも人にすがるなっての!わたしケヴィンがご飯作ってるの見たことないよ?』

『そりゃそうだろ、1回も作ったことナイし』

『作れーーー!!!』


なんとなく疲れて寮に戻って、冷蔵庫の中のアップル・ジュースを取りにキッチンに行ったら、ちょうど中でうろうろしてたケヴィンに会った。彼はわたしと同い年で環境学部1年生。
わたしにとっての「当たり要素」の中心がケヴィン。この人はムードメーカーで人間大好きだから、人を繋げるのもうまいんだ。そして寮の他の子たちも、ケヴィンのお陰あってすっかり意気投合してる。
これってほんと、一種の才能だよなぁって思う。


『だってフリーダ料理ヘタだし。スチューまだ帰ってきてないし。ホターだけなんだよー今いるの』

『だから?』

『フリーダよりはマシなもん作れるから、お願いなんか作って!おねがーーーい!死にそーなんだってば!』

『願い下げだねっ』

『なんだよーーーせっかくほめてやってんのに!』

『あれがっ!?UFOで何か買ってくればいーじゃん!』

『あれ?ふたりとも何ケンカしてんの?』

『『スチュー!』』


ケヴィンとわたしがレベルの低い攻防を繰り広げていると、ちょうどそこにスチュワートが入ってきた。今戻ってきたのかな。とにかく助かった!


『スチュー!ケヴィン甘やかしたらだめだよ!自分でご飯作らせるようにしつけないと』

『まぁよ〜そうだけどさ。あ、今日カレー作るつもりだけど、ふたりとも食べる?』

『『食べる!!!』』


なんかわたしまで餌付けされてる気がしないでもない・・・。スチューはイギリス人にしては料理できる方。
ここの寮の子たちはみんな面白くて、ヨーロッパ人じゃないからって変な目で見たりしないから好き。それに、異性とかそんなんじゃなく、友達としてみんな対等だから居心地がいいんだよね。嫌とか怖いって気を、ここの男の子たちに対して起こさないでいられてるのは、そのお陰だと思う。この先はまだわからないけど。


『多分、フリーダも食べるって言うよ』

『そうだよな。その分も作るつもりだよ。ホタル、ちょっと手伝って』

『アイアイサー』


このフロアでは、ケヴィン、スチュー、フリーダって女の子とわたしの4人は特に仲良しさん。他の子とも仲良くなってるしね。大学始まってまだ少ししか経ってないのに垣根のない付き合いができるこの場所は、あたしにはとっても気の許せる場所。
クラスでもこんな付き合いができるようになっていくといいなぁ。

 

付け加えておくと、ご飯を作るとは言ってもここの人はレンジでチンな食べ物とかしか食べてないけど。生徒だから、あんまり料理できない人も多いし。今日のカレーも、きっとレトルトかも。

 

 


 


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