わたしの中で変わったこと

用語

 

 

 

別に、日常生活にそこまで支障を来たすわけじゃない。
ある程度離れて対処すれば、全然普通に生活していける。他の人にも、気づかれてないと思う。
でも正直言ってあたしは、これをどうすれば治せるのかわからない。治せるとも思わない。
昔の自分からは、全然想像できなかったことだけど。

川内ほたる、19歳。わたしは、男が嫌いだ。

 

 

 

小学、中学はむしろ仲が良すぎってくらい、男子とは渡り合ってた。
女子の友達だって当然いるけど、男子ともめちゃめちゃ仲良くて、それに一緒にぎゃはぎゃは笑っているのは楽しかったんだ。そして高校。
高校1年の時もその調子は続いてて、わたしはそれまでと同じように男子とも仲が良かった。多分、異性って感情を抱かせない感じだったのかもしれない。要は幼かったんだろうね、わたし。実際、人並みに恋をしたことはあっても、わたしはそれだけで満足っていうか、別に誰かと付き合うなんてことは思いつきもしなかった。
でもそれはそれで、成長過程だったのかもしれないけど。
そして高校2年。わたしは県費でできるヨーロッパ留学の試験を受けて、合格。そして高校2年の1年間、わたしはイギリスの高校に通うことになる。この高校生活がまず、わたしにはやばかった。

イギリスの高校で受けた、異性を見る目。異性を扱う態度。異性に触れる手。
それらのひとつひとつが、じわじわとわたしを奇妙な気分にしていった。だって、日本とイギリスでの女の子の扱いが、こんなに違うなんて思わなかった。確かに高校2年生っていったら、ここでは大人に近づいているし、それまで単にわたしが異性扱いされてなかっただけ・・・でもそれだけじゃなかった。

 

ひとつのきっかけになったのが、高校の卒業パーティーだった。
1年の留学予定のはずが、わたしは思いの他イギリスが気に入ってしまって、1年延長してた。だからわたしはここで卒業式を挙げて・・・その後のパーティー。
お酒ありのそのパーティーで、わたしは酔った男の子にいきなりキスをされた。
そう、人から聞けば「・・・それだけ?」と思うかもしれない。けどわたしが2、3日深く沈んだ気持ちで過ごすことになるには十分だった。びっくりした気持ち、ショックな気持ち、恥ずかしい気持ち。すべてがわたしを不快にさせた。ロマンティストでも何でもないけど、奪われたファーストキスがやけにショックだったんだ。

そしてふたつ目にして決定的なきっかけ・・・それが、イギリスの大学に進学してすぐに訪れた。
正直いってわたしはバカだ。学習してない。
そのふたつ目が起こったのは、キャンパス内にあるディスコにひとりで行った時。
わたしはその時、新学期やら人間関係のことで沈んでて、ただ憂さ晴らししたかっただけなんだけど・・・ダンスフロアで踊ってると、ふたり組みの男の子につかまって仕方なく一緒に踊ってた。
知らない人と一緒にバカやって踊るっていうのは、ここじゃ普通のこと。踊るのは楽しいしみんな自分の世界に入ってるし、お酒だって入ってるから全然、普通に起こること。
ふたり組みのうちひとりはここの生徒だったけど、もうひとりは彼の友達で、週末だけ遊びに来たって人で。
そのビジターの人の友達が寮に戻るって言った後、彼は戻るそぶりも見せなくて、もっとからんで踊り出して。わたしももう帰りたかったけど・・・顔を彼に向かせられたと思ったらあごをとられて、キスされてしまった。
前にされたようなさらりとしたものじゃない。何度も吸いついてきて舌まで入れられて・・・すっごく泣きたくなった。気持ち悪かった。
逃げようと思えば逃げられたはずなのに・・・そう思うと、今でも自分がムカつくし悲しくなる。でも怖かった。
わたしは目を瞑ってひたすら受けて。その後、わたしは何か嘘をついて離れた。もうこれ以上は無理だった。
寮に住んでるのって聞かれても、流してすぐにそこを離れた。もし教えてたら何が起こってたかわかんない。

 

踊る時、腰をとられるのも体を寄せられるのも実は好きじゃなかった。以前から。
けどそれを越えて、わたしはついに男嫌いになってしまった。特にお酒の入った男。
普段生活する分には大丈夫なんだ。前みたいに笑い合ったりふざけ合ったりだってできる。
・・・多分、男の子がわたしを異性として触れたり、意識した途端だめになるんだ。意識させられた途端、遠ざかりたくなるんだ。ちょうど、キスされた時みたいな気持ち悪さを感じるんだ。
あんな風に触れられるのはもう嫌。
だから誰も好きにならない。・・・なれない?でもきっと、これから先ももしかしたら誰かを好きになるなんてこと、起こらないかもしれないと思う。

 

起こるとしたらそれは、男嫌いをも越えるような、越えさせてくれるような何か、誰かが現れた時なんだろう。


「・・・そんなもの、絶対現れない」

 


それが今現在のわたしの本音。
そしてキスに対する気持ちも、虚ろになった。気持ち悪くて受け入れがたい、あんなものわたしはいらない。

 

 


 


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