嵐のような大降りの中、これ以上歩き続けるのは困難だろう。
先頭の俺は、予定外だった近くの町へ寄って雨宿りすることを提案した。
そうして歩きに歩いてたどり着いた末に、開いたのがここの扉だった。
よそよそしさを感じさせない、あたたかい雰囲気の食堂。
今は客足の落ち着いている時間帯なのだろう、客は俺達以外には数名しかいない。
外の豪雨は、しばらく和らぎそうもない。
そのままここで、早い夕食をとってしまうのもいいかも知れない。
ここ数日の旅程で、皆思いの他疲弊していた。特に女性陣は。
この際、この町でゆったりと小休止というのも悪くないだろうか。
あたたかい飲み物でひと心地ついたティンはうとうとしはじめ、
それを見つけた沙織さんが柔らかく微笑む。
ルエヌさんは外を見てため息をつき、エディルは俺にどうしますかと問う。
総指揮官だった頃と完全には違わないが、それでも確実に違う俺の周り。
そして明らかに変わりつつある、俺の中の何か。
それらのもたらす感覚は、嫌ではなかった。
むしろ、変化をもたらす要因の中心である彼女に、
少しずつ近づけているような感覚すらして喜んでしまうほどだ。
更に、実はこの仲間達との旅を楽しんでいる俺がいるということ。
どれもまったく予測もしていなかったことだが、悪くはない。
だが、ふとした時、俺の中に浮かび上がる闇・・・旅の終わりと、その後。
それはとても暗く深く、忘れることはおろか無視すらさせてはくれない。
限られている時間だからこそ、少しでも長く、少しでも多くの瞬間が欲しい。
ほんの一秒ですらも長く、旅をしていたかった。
彼女のために・・・俺のために。
だから早く雨が和らいでほしい。止んでくれるなら尚いい。
旅をさせて欲しかった。沙織さんと旅を・・・一瞬でも長く、少しでも遠くへ。
だから―――・・・。
かすかな焦りと儚い望みを宿した眼で、俺は未だ光が差すことのない重い雲間を見上げた。